【ジュニアサッカー観戦の疑問】なぜ、試合の出場機会を平等にするのが難しいのか<前半編>

「今日、試合どうやった?」

「俺、あんまり出られへんかった。2試合目の後半だけ。」

「そうか、また頑張って練習しよう。」

 

張り切って試合に出かけたものの、出場機会の少なかった子供とする会話は、もの悲しさが漂っています。

努力している姿を知っているだけに、何とか出場機会を増やしてあげたいと思ってしまうのが親心というものです。

 

特に高学年になると、公式戦を含めた出場時間は選手によって大きく異なっていきます。

多くのメディアや指導者の間で、「育成年代の出場機会を増やし、試合の経験を重ねることが選手の成長につながる」と言われているものの、実際の試合会場では出場できる選手と出場できない選手の差が生まれているのが現実です。

 

出場機会の平等化は、ヨーロッパを中心とした海外のジュニア世代で広く浸透しており、国際試合でもその精神を垣間見ることができます。

しかしながら、国内ジュニアサッカーの現場では、未だ『出場機会の平等化』が浸透しているとは言えません。

今回は、なぜ、出場機会を平等にするのが難しいのかについて考えてみたいと思います。

 

総論賛成・各論反対が現状


「育成年代の出場機会を増やし、試合の経験を重ねることが選手の成長につながる」と聞いて、異論を唱える人は少ないと思います。

ところが、「いざ試合になるとついつい熱くなって勝ちにこだわってしまう」というのが、指導者や保護者の本音です。

総論では賛成しているものの、各論では反対となる。

良いところで勝てなかったり、プレーが繋がらない、練習に取り組む姿勢に個人差がある現実を見ると、すべての選手の出場時間を平等にすることに反対の意見が出てくる訳です。

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『出場機会の平等』って時間?それとも回数?


次に出場機会の平等化を阻む原因として、『平等』の基準が曖昧であることがあります。

少年サッカーで使われる『平等』は出場時間ではなく、出場回数であることがほとんどです。

なぜなら、時間単位での平等化は試合に呼ぶ人数を制限することになり、物理的に管理できないからです。

 

また、出場回数は全員が一律○回ではなく、○回以上出場するというものが多いようです。

選手ごとにできるポジションが異なり、1日に行う試合数が限られているからです。

キーパーやセンターバックはできる選手が限られますし、そこで出場したくないという選手も多いように思います。

 

交代が上手くいけば問題ありませんが、目の前でチームが負けていくのを喜んで見ている指導者や保護者はいません。

ノルマをこなすように交代を繰り返した試合は、全員が出場したという事実はつくれるものの、すっきりした気持ちにはなれません。

途中出場した選手の保護者、交代した選手の保護者、連続出場した選手の保護者がそれぞれにもやっとした感情を抱えたままの観戦が続いていきます。

 

チームに関わる全ての人が納得する試合とは?


ジュニアサッカーにおいて、チームに関わる人すべてが納得する試合とはどんなものでしょうか。

ここからは、関わる人を指導者、選手、保護者に分けて、それぞれの視点から納得度を比較してみたいと思います。

ジュニアサッカーの観戦を続けていると、選手全員の良いところが重なり合ってチームがひとつになる、奇跡のような試合に出会うことがあります。

そういった試合の後は、選手だけでなく指導者や保護者も高揚感に包まれ、「サッカーをやってて良かった」と心から思います。

たとえ、あと一歩及ばずに負けてしまったとしても、一生懸命戦った選手に不満を漏らす人はいません。

そのため①②のような、全員が出場し、かつ内容が良い試合は、指導者、選手、保護者ともに納得度が高いと言えます。

 

その一方で、③④のように全員が出場したものの、試合内容が悪い場合は、勝敗に関係なく不満が出やすいように思います。

例えば、同じミスが目立ったり、やる気が見えなかったり、運でギリギリ勝ったような試合は、どうしても悪いところに目が行ってしまいます。

指導者は、当たり前のことができていない状況に憤慨し、保護者は「この前はあんなにいい試合だったのに、なんで?」という気持ちから、コーチや選手への不満をもらしてしまう訳です。

 

つまり、ジュニアサッカーに関わる全ての人が納得するためには、試合内容を良いものにする必要があるということです。

やや抽象的に聞こえますが、指導者が『日頃の練習で伝えていること』や『試合前のミーティングで言ったこと』が全員できていれば、良い内容になっているはずです。

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内容が悪い試合の後、メンバーをどうするか?


しかしながら、選手全員の力が発揮できる試合は、10試合中1試合あればいい方で、ほとんどの試合は内容に改善すべきところがあります。

もし、大会初戦の内容が悪かった場合、引率する指導者は全員出場というルールの中で次の作戦を立てなければなりません。

コンディションの良い選手は問題ありませんが、コンディションの悪い選手をどこで使うかは悩みどころです。

 

前半をセカンド中心にするのか、後半をセカンド中心にするのか。

それとも、試合状況を見ながら前後半に分けて使うのか。

相手チームが強かったり、予選リーグの結果を左右する試合であればあるほど、全員出場するというルールがコーチに重くのしかかってきます。

 

頭では分かっているものの、相手チームはガチガチのレギュラーだったり、一進一退のゲームになってくると、ずるずると交代するタイミングが遅くなります。

勝負の世界で育って来たサッカー指導者にとって、自ら負けに近づく決断をするのは、余程高い志や強い意志がないとできないことだと思います。

ベンチにいる選手を呼んで準備させたものの、結局交代せずに試合が終わるという現象は、そういった理由から起こっているのかもしれません。

 

試合中に監督やコーチができることは、選手交代しかない


Jリーグや海外サッカーの試合を見ていると、試合終了間際に選手が交代する光景をよく見ます。

この交代って意味あるのかなと思ってしまいますが、時間を使う、交代枠を使い切る、選手の出場機会を増やすなど、色んな意味が込められています。

 

サッカーは一旦試合が始まってしまうと、選手以外はグラウンドに入ることができません。

ピッチの外から指示は出せるものの、指導者が直接ゲームに関与できる手段は、唯一選手交代だけです。

つまり、勝敗や試合の流れを変える方法は、選手交代しかないということです。

 

ジュニアサッカーは選手交代が自由に行えるものの、試合をコントロールしつつ、各選手の出場時間を確保しようとすると、どうしてもハーフタイムや試合終了間際の交代が多くなります。

そうなると、「この選手交代で流れを変えたい」というポジティブな交代ではなく、「この選手をどこかで出場させなければ」という交代となり、出場する選手にとっても実力を発揮しにくい状況になります。

 

試合の流れや内容を良くしながら、すべての選手を出場させる。

このタスクは、代表監督でさえ実行するのが困難であり、経験のある指導者と言えどかなりハードルが高くなります。

 

内容の悪い試合が続くと、選手や保護者から不満が出るだけでなく、主力選手が移籍したり、試合を組んでくれるチームが少なくなっていく可能性があります。

どのチームも、試合をする相手は上手い選手がいる強いチームを望んでいるからです。

 

また、SNSやHPに載る試合結果で、クラブの評判が変わっていく昨今では、勝ちにこだわってしまう気持ちがわからなくもありません。

多くのサッカー協会が『出場機会の平等化』に踏み切れない理由は、こうした様々な事情をクラブ側が抱えており、勝ちにこだわる指導をせざるを得ない状況があるからだと推測します。

 

後編では、指導者、選手、保護者それぞれの視点から、具体的にできることがないかを掘り下げていきたいと思います。

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