試合が終わった後に、「こうした方が良いんじゃないの」と口を出してしまうことってありませんか。
いけないなと思いつつも、ついつい思いが強くなってあれこれアドバイスをしてしまいます。
保護者によっては、「のびのびとやってくれたら良い」と言いながら、家に帰ったら「なんであんなプレーをするんだ」と怒っているケースもありそうです。
本来サッカー観戦は楽しいはずなのに、試合が終わるたびに行き所のないストレスを抱えていては面白くありません。
ここでは、観戦中に感じたことや伝えたいことを、子供たちから聞きたくなるようにするにはどうしたら良いか。
また、子供たちに分かりやすく伝えるにはどうしたら良いかを考えてみたいと思います。
保護者のアドバイスが悪と言われる理由
多くのサッカーに関する本やブログには、「親はプレーに口を出さない方が良い」「子供を通して親がサッカーをするべきでない」とあります。
また、JFAが保護者向けに配布している冊子めざせ!ベストサポーターには、『サッカーを知っているお父さんへ』という項目があります。
わざわざページを取っているということは、それだけ問題が起きている裏返しであると取れます。
■アドバイスが的確でない
子供たちにアドバイスを聞いてもらうには、そもそもアドバイスの内容が的確でなければなりません。
「お母さんは分かってないな」「お父さんは分かってないな」と思われるアドバイスを続けていても、ますます聞きたくなくなります。
大人でもそうですが、的を得ない意見を聞く側のストレスは大きなものです。
ここで言う的確とは、アドバイスの内容の善し悪しではありません。
保護者は普段の練習を見ておらず、また試合観戦も時々のものであるため、目の前のプレーに対してのみアドバイスをしがちです。
そのため、そのプレーが起こった背景や経緯が分からないままアドバイスをしていることが多々あります。
子供たちは、相手選手との駆け引きや仲間の特徴、コーチとの約束事など目に見えない理由を抱えながらプレーしています。
したがって、その見えない理由を汲み取った話でないとなかなか聞いてくれません。
例えば、シュートを打とうとしない子供に対し「あそこでシュート打ったらよかったのに」という一見まともなアドバイスは聞いてくれない可能性があります。
なぜなら、実際にはシュートコースがなかったり、なるべくゴール前まで繋いでいくという約束事をコーチとしている場合があるからです。
少し踏み込んで「相手のブロックが上手かったけど、コースあった?」「あの距離からはシュートしないの?」と、打たない理由がある前提で聞きだすと良いかもしれません。
プレーする子供の目線になることで、「自分の気持ちがわかっているな」と感じてもらうことが大切です。
■タイミングが悪い
子供の中には「試合中やチームメイトの前で、親に話しかけられたくない」そう思っている選手もいます。
親から掛けられるアドバイスは、しばしば一方通行になってしまいます。
さも怒られているかのように見えるアドバイスを、チームメイトの前でされたくないと思っているからです。
いくら良質なアドバイスであっても、本人に聞いてみたいと思う気持ちがないと入っていきません。
できれば、試合当日の帰り道やお風呂の中、就寝までのちょっと落ち着いた時間で話しておくと良いと思います。
そのためには、アドバイスする人がその時までに伝えたいことを整理しておく必要があります。
また保護者の思いつきではなく、決まったタイミングに行ったほうが良いと考えます。
■伝え方が悪い
「もっと粘り強く行かないと」「体力がないわ」
ついついこのようなアバウトなアドバイスをしてしまいがちですが、伝える側の話に具体性がないと聞く側は退屈です。
アドバイスする場合は、具体的なシーンを切り出して説明していきましょう。
ポジションの話であれば、紙やホワイトボードに書いて図で説明する。
実際にボールを使って、そのシーンを再現するのも分かりやすくする方法です。
子供たちはほとんどのプレーを覚えているので、「1試合目の前半の右サイドでクロスあげたあとの守備」と例を出して言えば大体覚えています。
聞きたくなるアドバイスにするには、どうしたら良いか。
■観戦回数を増やす
毎回応援に来ているお母さんと、たまにしか来ないお母さんではどっちが説得力があるでしょうか。
サッカーを知らなさそうなお母さんであっても、毎回観ているお母さんの言葉は重たいものがあります。
観戦回数を増やしていくことで、選手の特徴や試合の流れが分かるようになってきます。
「このケースは前にもみたことがある」「この流れなら勝てそう」と共通の記憶や予測を持つことが、子供たちの気持ちに近づく一歩となります。
■ルールを正確に覚える
ルールを正しく覚えている人の話は説得力があります。
ジュニアサッカーでは、ファウルかファウルじゃないかの判断があいまいな場合があるので、論理的に説明できると頼もしいです。
手に当たっただけで「ハンド!ハンド!」と叫んでいては、子供たちと変わりません。
反則にならない当たり方はどういったケースがあるのかを知っておくと、微妙な判定になった時に役に立ちます。
■チームのコンディションを把握する
ジュニアサッカーでは、チームのコンディションが勝敗を大きく分けます。
得点源となる選手の調子が悪かったり、チーム全体の連携が取れていない時はなかなか良い結果に繋がりません。
ジュニア世代はジェットコースターのように好不調の波がやってきます。
子供はプレーを通じてお互いのコンディションを感じ合っているので、そういった機微をプレーから感じ取れるようになると良いと思います。
■子供が知らない情報を入れる
相手チームの情報や過去の対戦結果など、子供たちが知らない情報を話の中に入れると説得力が増します。
情報に頼りすぎるのは良くありませんが、『孫子の兵法』にもあるように、戦う相手を知ることは大切なことです。
特に過去の対戦結果は、試合内容を思い出したりチームの成長度合いを知ることができる情報になります。
試合の場所や日付、スコア、得点者などアーカイブしておくと便利です。
■記憶の引き出しを増やす
観戦を重ねていくと、過去に経験した試合展開やプレーと同じシーンが出てくることがあります。
そういった過去の例と照らし合わせながらアドバイスすると説得力が上がります。
ビデオや動画を撮っていると、撮る方に気がいって試合内容が頭に入ってきません。
できれば、固定カメラにして生の試合を観た方が、臨場感や雰囲気を踏まえた内容になると思います。
分かりやすく伝えるためには、どうしたら良いか。
■アドバイスの数を絞る
試合を観ているとあれもこれも言いたくなりますが、アドバイスの数が少ないほど説得力が上がります。
できれば、どうしても伝えたいことを1つか2つに絞って話すほうが良いと思います。
ヒートアップしたら色々話したくなるので、どちらにしても最初に話しておいた方が覚えてくれそうです。
■戦術ボード(ホワイトボード)を用意する
戦術ボードがあると、ポジションやボールの動きを俯瞰的な視点で説明できます。
口頭だけだと伝わらないことがあるので、動きを正確に伝えるなら必要な道具であると言えます。
テレビでサッカー観戦をする時にも使えますし、100均のホワイトボードとマグネットでも代用できます。
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■有名な選手のプレーで例える
「中村俊輔のようなキック」「イニエスタのようなトラップ」など、イメージが言葉で伝わるような工夫が必要です。
プロ選手のプレーは、今までの経験に基づいた合理的な動きでできています。
言葉や映像で説明するのも良いですが、選手をイメージしながら説明したほうがより実践的な動きになります。
または、過去の自分の良かったプレーを例に出して「あの時みたいなシュート打ったらいいのに」と伝えると分かりやすくなります。
保護者のアドバイスは、迷った時の道しるべ
世間で使われる「温かく見守る」という言葉は、しばしば「干渉しない」「じっと見る」という意味に置き換えられることがあります。
でも本当にそうなのでしょうか。
スター選手と言われる人の幼少時代を紐解いていくと、ガチガチのスパルタだったり、親がビッチリ練習に付き添っていたケースも多々あります。
確かにコーチや指導者を差し置いて、堂々と話しかけたりアドバイスをするのは良くありません。
特に試合中の個人的なコーチングはマナー違反となり、トラブルの原因となります。
しかしながら、そこを理解した上で行われる子供が聞きたくなるようなアドバイスは必要であると考えます。
子供たちは見てくれているという事実によって、やる気が出たり緊張が取れたりするからです。
試合が終わった後に「今日どうだった?」「あのシュート見てた?」と子供から聞きに来る場合は、保護者と良い関係性が築けていると言えます。
逆に、試合のことを話そうとしなかったり、保護者を避けるような態度を取っている場合は注意が必要です。
鏡を見て「なんでやねん!」という気持ちが表情に出ていないか確かめてみましょう。
アドバイスというと難しく感じるかもしれませんが、「良かったよ」とか「もうちょっと頑張ったほうがいいね」という感想のようなものであっても構いません。
重要なのは、子供が聞きたくなるかどうかという点です。
子供が聞きたくなるためには、評価の軸を明確にして、分かりやすく伝えることが大切であるように思います。